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商品詳細
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ヴィクトリア期の英国貨幣界が創造した遺産としての名貨「ゴチッククラウン」
19世紀中盤以降、全世界に版図を広げ世界五大陸を支配下に置いた大英帝国。その強大な国家に宗主として君臨したヴィクトリア女王の時代は「ヴィクトリア朝」と称され、歴史上におけるイギリスの最盛期として今もなお明確に記憶されています。政治経済のみならず、あらゆる分野において黄金期を迎えたこの時代に、イギリスコインの世界もまた比類なき爛熟期を迎えます。19世紀前半に起こったナポレオン戦争終結後のイギリスの経済は事実上混迷を極めていました。そのような背景の下に、ロンドンの貨幣界に彗星の如く姿を現したのがイタリア・ローマ出身の大彫刻家ベネデット・ピストゥルッチ(1783-1855)でした。そして金本位制を主軸とする新たな貨幣制度が導入されることになり、新しいコインのデザイナーとしてピストゥルッチに白羽の矢が立ちました。同時期に活躍した中部イングランド出身のウィリアム・ワイオン(1795-1851)とピストゥルッチを擁していたヴィクトリア朝初期の英国貨幣界はまさに貨幣制作のピークに差し掛かっており、数多くの名作がこの時期に誕生しました。中でもワイオンは、高名なワイオン一族の末裔として家業を継承し確かな腕を備えた名彫刻家として大成し、「スリーグレーセス」や「ウナとライオン」を始めとする傑作デザインの数多くを輩出したことで知られています。ヴィクトリア女王の即位10周年の年、つまり1847年に贈答用のクラウン銀貨として発表されたのが歴史的に名高い「ゴチッククラウン」であり、ワイオン最晩年の傑作として、また史上最も美しい銀貨として高い人気を誇ります。表面には左向きのヴィクトリア女王の横顔が描かれていますが独特な髪型、意匠の文様、そして周囲の碑文と全てが見事な融合を果たしている点が強く印象に残ります。ゴチック様式ならではの厳格で堅固な様式美がこのポートレートをして「モナリザ」のイギリス貨幣版ならしめる所以と思われます。また裏面中央の十字に見える盾形の紋章にはグレートブリテン連合王国三国のシンボルが挿入されており、中央のガーター勲章の徽章とともに同デザインの劇的効果を高めています。裏面の周囲にもまたゴチック体の「ブラックレター」による碑文が刻まれており、表裏共に見事な統一感を見せています。王室の権威と連合王国の威信を象徴するこれらのデザインは、ヴィクトリア女王の治世下における英国貨幣界が創出した最高度の芸術的成果として、今日に受け継がれています。
21世紀に受け継がれる「ゴチッククラウン」のスーパー・レアリティー
今回ご紹介させていただく作品は、1847年度版「ゴチッククラウン」の純銀プレーンエッジタイプです。このタイプを含めてわずか8000枚の限定発行であったことがよく知られている1847年度版「ゴチッククラウン」。シルバーの劣化の度合いが絶妙グラデーションを見せる当コインは、一世紀以上もの歳月を経て奇跡的に守り抜かれた名品中の名品に該当します。同年度版としましては「プレーンエッジ」と「アンデシモ」の二種のエッジ碑文タイプがよく知られていますが、こちらはシンプルな方で、エッジに碑文は見られません。英国貨幣に特化したオークションの開催によって世界的に知名度の高いスピンク社の書籍「English Silver Coinage」に情報が掲載されている同コインですが、同書籍の最新版によりますと、コインのレアリティー度を示す格付けにおいて上から4番目の稀少度を意味する「R4」が与えられておりコレクションに最適です。これからまだまだ価格の高騰が予測される「ゴチッククラウン」ですが、これらの点が今後の推移に有利に働くことは間違いありません。英国貨幣界を代表するヴィクトリア朝の絶品コイン「ゴチッククラウン」ですが、19世紀イギリスの王朝文化を今日に伝える芸術性豊かな貨幣として細く長く生きながらえて行くことでしょう。
碑文中に上下逆に打刻されている文字Nの謎の究明
「ゴチッククラウン」の純銀プレーンエッジ・タイプのものの中で、碑文中の文字が上下逆に刻印されているものは、元々の発行枚数と現存枚数の稀少性で知られており、コインコレクターの間では大変珍重されているものです。エラーの詳細の一例を挙げますと、碑文中のUNITAの語の中のNが上下逆に刻印されるというエラーが報告されており、レアリティー度を高めています。同様のエラーは別のコインのDOMの箇所のMにも見られますが、これらに共通する幾つかの原因が浮かび上がります。因みに裏面の碑文「tueatur unita deus anno dom 1847=神よ連合王国を守り給え・西暦1847年」中の、連合王国を意味するunitaのnと、西暦を意味するanno domのmがそれぞれのコイン上にて上下逆に刻印されています。1847年度版の総発行枚数が8000枚、また1853年度版のそれが460枚との記録が残っている「ゴチッククラウン」ですが、この共通のエラーは1847年度版の純銀プレーンエッジ・タイプのコインのみに限定され、これに先駆けて発行されたアンデシモタイプや1853年度版セプティモタイプには見られません。またこのタイプのコインための金型製造時には既に誤って文字が上下逆に打刻されていたものと思われ、決して複数回の打刻によるエラーであったり、製造過程における金型や金属板状態のコインのポジションがずれていたために起こったエラーではないことが分かります。イギリスコイン関連のオークションの開催で世界的に有名なロンドンのスピンク社の書籍「English Silver Coinage」の最新版が同種のコインのレアリティー度の指標をそれぞれR2からより希少性の高いR4に改めたことにより、同種のコインの発行枚数がそれぞれ僅か11枚から20枚程度であることが推測できます。



















